ゲストをファンにする効果的なBGMの使い方とは

演出(小道具、スライド)

ゲストをファンに、聴衆を顧客にするために、実は大きな鍵となるBGM。

最近、かの坂本龍一氏が行きつけのレストランにて流れているBGMが気に入らず、選曲を店側に直談判したという出来事がありました。

「料理は桂離宮のように美しく最高なのに、BGMのチョイスはトランプタワーくらい酷い」とそのメールには書いてあったそうです。

ここでは具体例に触れながら、与える印象のコントロールにおいてBGMがいかに大切かということをお話しします。

自分1人の持つドラマ性で勝負をしない

ボクシングの試合をテレビなどで観たことがあるでしょうか。

選手が入場する前から、その選手固有のテーマ曲を大音量で会場内に流し、待ち構える観客を扇動するというお約束の場面があります。 

スモークが焚かれ、飛び交うレーザー、観客の歓声、煽る実況司会者、若干の間。

そして大音量で鳴り響く、Queenの「We will Rock you」!

「We will Rock you」や映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』のテーマ曲「彼こそが海賊(He’s a Pirate)」などは耳なじみも良いので広く国民にもわかりすく、多用されます。

後者の曲は、ミドル級の村田諒太選手がデビュー以来使い続けています。この曲の使用を決めたデビュー戦当日に恩師からもらった手紙にあった、「プロという名の大海原へ航海に出るんだ」という言葉の影響があるそうです。そういったエピソードに思いを馳せると、選手の闘う姿への思い入れがいっそう強くなります。

また、ヒップホップの楽曲を起用する選手も存在します。

その中でも、エミネムの「Lose Yourself」という曲は有名です。

本人の自伝的映画『8 Mile』の主題歌としても使われていたのですが、たったひとつのマイクと自作の歌詞でラップバトルに挑むことで、苦境や貧困に立ち向かおうとする姿が思い起こされます。

「この声ひとつでここからのし上がってやる」という歌詞に込められた強いメッセージと、ボクサーの「この拳ひとつで裸一貫、自分の力を試してやる」という反骨精神はドラマティックにリンクします。

ミュージシャンが持つストーリー性やイメージが相乗効果を生み、観客をより惹き込む世界観を作りだすことができるのです。

BGMを侮るなかれ

加えて、BGMは空間の雰囲気の仕上げに大きな影響を及ぼすという魔力も持ち合わせています。

恋人にプロポーズをする決意を固めたとしましょう。

生涯あなたを尊重し、大切にします。その想いを行動で示すべく、勝負の場所にもこだわります。

立地やインテリア、メニュー等に高級感やこだわりが漂うレストランを選び、首尾は上々。

うっとりするようなムードに後押ししてもらうように図る人は多いでしょう。

良いワインをボトルで入れて、フルコースを食べて、指輪をパカッ、ああ完璧なプラン!

あとは当日にお腹を壊さない、電車の遅延を見越して30分前行動する、ムダ毛のチェック、心も体も準備は完璧です。

いざ、本番。

ところがどうでしょう。そのお店に漂うハイクラス感とは真逆の、激しいシャウトが連呼されるデスメタルや、ズンドコ節などがランダムに流れてきた日には一発で興ざめです。

そんな時は焦らずに、プロポーズなどの勝負事は一旦やめて、落ち着いたジャズが流れるバーに移動するという英断をお勧めします。

もちろん万が一デスメタル好きがきっかけで恋に発展した二人であれば、粋な演出だと捉えてもらえる事もあるかもしれません。

そうでない場合は、せっかくあなたが狙っていたロマンティックな雰囲気は、BGMの方向性が異なることで台無しになってしまうという危険をはらむのです。 

ゲストをファンにするために

一転して、BGMを一切かけないというこだわりを持つ、老舗の天ぷら屋の話をしましょう。

天ぷらは、音によって素材を揚げるといいます。料理人は「パチパチパチ・・」という油の音を聞き分けて、揚げ具合を判断するのです。

通な客人は、カウンターでその音を聞きながら出来上がりを待ち、揚げたての天ぷらを愉しみます。

その繊細な音を守るためにBGMを流さないという計らいは「粋な店を選んだな」という自尊心もくすぐり、客人の舌だけではなく、心まで満足させられるでしょう。

店側のこだわりの詰まった曲を流したとしても、「ゲストが老舗天ぷら屋に何を求めているか」の視点に立てなくては、ただの無粋な店と判断されてしまうかもしれません。

これらの具体例からいえることは、パブリックスピーキングの場面においても、表現しようとしているコンセプトや世界観に合う音楽を選ぶことが、演出の後押しになるということです。

まとめ

このように、BGMをどう使うかで勝負が決することがあります。

館内放送のBGMをそのまま使うのではなく、戦略の一環として気を配ることも意識したいものです。

講演前の待ち時間や登場のタイミング、またプレゼンの山場など、場面によってBGMを仕込むことで、与える印象に影響を与えられるでしょう。

細かな音響による世界観をも操ることで、聴き手を惹き込み虜にさせる、策士になりましょう。

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