あなたは今度の飲み会で、乾杯の挨拶をすることになりました。
その場合、どんな準備をしますか?
いや準備といったって、みんなどうせ終わるのを待ってるだけでしょ〜
…大体の人はそうかもしれません。でも、あるポイントを鍛えると、言いたいことをスッキリ伝えられるようになるんです!
それが語感です。
語感のいい人はずるい!
同じ内容でも、グダグダしてよくわからない話と、言葉がスッキリと伝わってくる話があります。その違いはなんでしょうか?話の上手い芸能人を思い出してみましょう。
明石家さんまさん、タモリさんこと森田一義さん、笑福亭鶴瓶さん、、、みんな最高に面白いです。特に、さんまさんの「お前、それはあかんやろ!!」のツッコミの速さと的確さは、本当に心地よくて、ずっと見てしまいます。踊るサンマ御殿の、指揮者として、全体を仕切る音楽性は、フルオーケストラを凌駕します。たぶん。
こういった芸能人に共通するもの、それは言葉のセンス、つまり『語感』がいい、ということです。まったく同じ内容でも、話し手の語感が良かどうかで、受け手が感じる印象は一変します。
乾杯の挨拶が心地よいか、つまらないかは、ほとんど内容が同じなわけですから、「語感」がものを言います。
ずるい!!って思われるくらい、話が上手くなるのには、最終的には『語感』を磨くしかありません。
村上春樹と夏目漱石の語感
『語感』とは、なんでしょうか?語感とは、言葉のリズムやメロディー、韻など、言葉から感じるフィーリングを指します。
当然、書き言葉にも語感があります。日本文学を代表する夏目漱石と、村上春樹を例に考えてみましょう。夏目漱石の代表作である、『坊っちゃん』はこう始まります。
(引用)「親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている。」
リズミカルな文体で、主人公の個性と時代観が伝わってきませんか。
今度は、村上春樹の『ノルウェイの森』の一部を見てみましょう。
(引用)「僕は三十七歳で、そのときボーイング747のシートに座っていた。」
クールで語り口調が特徴的に感じます。
夏目漱石と村上春樹が入れ替わったら、あくまで想像ですがこんな感じでしょうか。
ノルウェイの森を夏目漱石が書いたら、
「大型旅客機の席に座りながこう考えた。三十七歳、齢中頃にして如何に生きるか」
坊っちゃんを村上春樹が書いたら、
「僕は子供の時、いつもやり過ぎてしまう。おかげで、いろんな人を困らせてきたと思う。」
ちなみに、夏目漱石はやや七五調に寄せることで、時代観を演出し、主語がないのが特徴です。
村上春樹は、主語が「僕」で、丁寧で断言しない言葉遣いになりがちです。同じ事柄について書いたとしても、書き手によって印象は全く変わります。
話し言葉の語感
では次に、話し言葉の語感を考えてみましょう。
先ほど話の上手な芸能人としてあげた、明石家さんまさんやタモリさん、笑福亭鶴瓶さんに、仮に同じシチュエーションで、同じ内容の話をしてもらったとします。
さんまさん地面を棒で叩きながら「お前、それはあかんやろ!!」
つるべさん顔を真赤にしてちょっと震えながら「それはあきませんやろ!!」
タモリさん真顔で「えっ、あっ」
になります。
同じ内容でも、それぞれの個性で彩られ、違った形で聞き手を魅了してきます。
では、相手を惹きつけるような語感を身につけるためには、どんなトレーニングが可能でしょうか?・・・いや、そもそもの可能なのでしょうか?
語感を訓練するとは?
ある中学校に、すごい授業がうまいレジェンドの先生がいました。その先生の授業は、テンポが良く、面白い、と生徒達に評判です。もちろん、授業を支える専門的な知識が土台となって、授業を作り上げているのですが、それ以外の要素は何なのかが気になり、そのレジェンドに伺いました。
彼は、間の大切さ、ということを教えてくれました。一気に話すことが大切な時もあれば、一定の速度でなく、聞かせたいところで、間をとる。
彼がこの間を意識したきっかけには、落語がありました。就職したての頃、先輩の勧めで落語をよく聞いていたそうです。でも、ただ聞くだけじゃなく、気に入ったものはその内容を覚え、家で一人高座をする。その取り組みが、今の話し方に影響を与えているのだと言っていました。
これは、語感を訓練で身につけたエピソードと言えます。語感は、意識して訓練することによって鍛えられるんです。ちなみに、演説が上手なことで有名な小泉進次郎さんも、落語で勉強しているそうです。
まとめ
アウトプットの際には語感が鍵を握る、ということがわかりました。語感という視点で周りの話の上手い人を意識してみてみると、より具体的にイメージできると思います。では、どう訓練したらいいのでしょうか?次回は語感を身につけるためのトレーニングについてお話しします。
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