感動したスピーチ・プレゼンを思い出せますか?私は、あるスピーチを聞いて涙が止まらなくなったことがあります。そのスピーチはなぜ、私の心を鷲掴みにしたのでしょうか?その理由を考えてみました。
スピーチを盛り上げるコツ
そのスピーチは、完璧主義でロボットのような先輩が、人間の心を取り戻したという内容でした。
これが、映画や演劇などの基本的な作劇法〈ドラマツルギー〉に則って話していたことが、後でわかりました。
だれでも、簡単に感動をつくることができる〈ドラマツルギー〉についてご紹介したいと思います。
ドラマツルギー
〈ドラマツルギー〉は次の図のような流れのことです。抽象的な5コママンガみたいなものです。
〈①安定している日常〉
日常とは、日々何気なく過ごしている状況のことです。
日常とは、だいたい眠たいものです。日々の繰り返しで、つまらなくて、退屈で、どこか行きたいなあとか、なんか起こんないかあと思うような、平凡な日々を指します。
〈②事件〉
そんな何気ない日常を過ごしていたあなたに突如何かが起こります。事件は、あなたの平凡な日常を破壊します。ゆるゆるに過ごしていたあなたは一転、緊張感に襲われます。なんとかしなければ。
〈③不安定な非日常〉
事件が起こると、あなたはパニックに陥ります。
「何とか解決しよう、あぁでもない、こぅでもない」とジタバタします。このジタバタに、聞き手は手に汗握ったり、思わず笑ってしまったりします。
〈④解消〉
さまざまな努力の末、不安定な非日常を乗り越えて、その状況が克服され再び安定を取り戻します。
〈⑤新たな日常〉
再び安定した日常は、以前のものととは少し違って感じられて、多くの場合、成長しているかもしれません。
以上が感動を生み出す〈ドラマツルギー〉です。
さて、私が感動したスピーチをご紹介しましょう。最高に感動的なスピーチでした。伝わるでしょうか?
結婚された会社の先輩Mさんへ、憎たらしい後輩からの祝福スピーチ
〈①安定している日常〉
Mさん。私は入社直後からあなたの下で仕事を教えていただいてきました。あなたは、四六時中、仕事に対してストイックに取り組み続けていましたね。ご自身はもとより職場メンバーにも容赦なく完璧を求めていました。
だから、私は、影であなたのことを「仕事サイボーグM」と呼んでおりました。
そんな仕事サイボーグMの唯一の弱点、それはカノジョができないことでした。仕事で全く敵わない私にとって、あなたに付け入る隙はそれ以外に何もありませんでした。
また、サイボーグであるあなたが唯一、人間らしい姿を見せる瞬間、それは私をはじめ職場メンバーから「やーい、万年カノジョなし!」をいじられているときだけでした。
そう言われるといつも、あなたは困惑の表情を浮かべ、一瞬だけ人間的な笑顔をみせてくれていました。
〈②事件〉
そんなある夏の日、私の家のポストに1枚の写真ハガキが届きました。
〈③不安定な非日常〉
その写真ハガキに、私は衝撃を受けました。
休日も作業服しか着ていないようなあなたがなぜか黒い袴姿で、しかもその隣には、あなたには不釣り合いで綺麗な女性が白い和服姿で写っているではありませんか!
「私たちの新生活がスタートします。どや。びっくりしたやろ!!」
とのあなたの手書きメッセージがそこに添えられていました。
私は、
「は?どういうこと?しかもこんな綺麗な女性と?!なにこれ?」
と、驚きを通り越し、憤りすら感じてしまいました。
あなたはご存知ないかもしれませんが、翌日の職場は、それはそれは大変なことになっていました。
「Mが結婚する?!
Mから仕事で攻められたときにMをツッコむネタがなくなった。マズイ、何もなくなってしもうたわ!」
あなたがご結婚という武器を身につけ、「完全無欠な仕事サイボーグM」へと進化してしまったと、職場中がパニックに陥っていたのです。
〈④解消〉
しかし、それは取り越し苦労に終わりました。結婚が決まって、あなたはすっかり変わりました。
いつも冷たい眼差しで「使えねえなあ」とこちらを一瞥していたあなたが、「仕事で困ってること、ないか?」と、まるで人間のような優しい目を向けてくれるようになったではありませんか。あなたは、サイボーグではなかったのですか?
〈⑤新たな日常〉
あなたに血を通わせ、人の心を移植してくれたのは、他でもありません。お隣におられる奥様のT子さんです。
これからは心の宿った人間として、引き続きご指導いただければ幸いです。
そして何より、あなたの「恩人」である奥様をいつまでも大切に、お幸せにお過ごしください。ご結婚おめでとうございます。
まとめ
感動的な物語の裏には、このような〈ドラマツルギー〉が仕組まれています。
映画、ドラマ、小説、神話、演劇、ありとあらゆるものにです。
スピーチやプレゼンもまったく同じです。
ドラマツルギーで聞き手を感動させてください。
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運営会社について
運営会社 コムニスは、日本で初めてのスピーチライティング/プレゼンテーション/パブリックスピーキング支援を主な事業とする企業として2006年に創業しました。
これまで企業の経営者、役員や政治家など、トップリーダーを含む1,500人、100社以上のクライアントを支援してきています。
現在は、複雑化するコミュニケーションを支援するため、デザイン、出版、動画制作、写真スタジオ、ミス・ミセスコンテスト対策、ゼミなど、活動の幅を広げています。
コメント
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