第107回蔭山ゼミの概要
開催日:2024年6月2日(日)
精神分析学の巨匠 ジャック・ラカンの理論を通じて、人間の心理と社会との関係性について学びました。
ラカンは、フロイトの精神分析学を基に、現代の言語学や教育、ジェンダーの思想など様々な分野に影響を与えています。
今回の課題図書:『生き延びるためのラカン』 - 斎藤環
精神科医で、日本を代表するラカン研究者の斎藤環先生が、ラカン理論をわかりやすく解説した書籍です。
ゼミでは、さまざまな角度からラカン理論を深掘りしましたが、ここでは、ラカンの理論の核心、「現実界」「象徴界」「想像界」についてまとめていきたいと思います。
ラカンが提唱した「現実界」「象徴界」「想像界」
ラカンは、人間の精神構造と世界との関わりを説明するために、「現実界」「象徴界」「想像界」を提唱しました。
現実界(リアル)
現実界は、言語や記号で理解することができない領域のことです。例えば、暴力、恐怖、混沌、生き物の生のエネルギーなど、人間にとって理解できないものや制御できないものを指します。
現実界が過敏になると、恐怖や不安が強くなり、神経症になります。
象徴界(言語と秩序の世界)
象徴界は、言葉や記号によって秩序つけられた世界のことです。言語、法律、社会規範などを指します。私たち人間は、象徴界というラベルを通して世界を認識し、コミュニケーションを取り、行動しています。
象徴界は、現実界を秩序化し、理解できるようにしますが、現実界そのものを完全に表すことはできません。
映画やアートは、象徴界を使って、現実界を見せたり伝えたりする役割を持ちます。
想像界(イメージ、幻想の世界)
想像界は、名前の通り「想像」で、私たちが自分自身を想像したり、他者との関わりの中で欠かせない概念です。私たちは、想像界で生きています。
この想像界は、精神的なトラウマ(暴行など)によって崩壊します。
さらに悪化すると、現実と想像の区別が曖昧になり、妄想や幻覚などが症状として現れます。
統合失調症などの精神疾患は、想像界が崩壊している状態といえます。
現実界、象徴界、想像界を使ってトラウマを克服する治療
精神科では、「現実界」「象徴界」「想像界」の概念を用いたトラウマ治療法があります。
トラウマとは、現実界で起こった暴力や事故、戦争などの悲しい出来事によって処理しきれない心の傷のことを指します。
そこで、剥き出しの悲しい出来事を、専門家のもとで、象徴界を使って言語化し、整理をしていきます。この言語化の作業は非常にデリケートで難しく、何度も繰り返しながら時間をかけて治療を行い、整理をしていきます。
こういった治療を重ねることで、患者はトラウマ体験を象徴界で理解し、克服していきます。
また、蔭山ゼミでは以下のような討論も繰り広げられました。
- フロイトのエディプスコンプレックス理論
- ファルス、去勢の概念
- 個人主義と家父長制の対立
- フェティシズムと政治の結びつき
などなど
精神分析学、心理学、社会学、などを横断しながら学びを深めました。
参加者の感想
- 統合失調症や認知症を知るたびに怖いと思っていたが、疾患の構造がわかり、人間の精神・神経症に対する見方が変わった。
- 今までLGBTQの話題に対して、何が問題で何に怒っているのかよくわからなかったが、ラカンを通してセクシャルマイノリティがなぜ炎上しやすいのか、すぐ問題になるのかがよくわかった。
- ファルスの話を聞いていると、身の回りにいるファルスのある人と、ない人が想像できて、現代人の課題が可視化できた。
まとめ
ラカンが提唱した理論を学ぶと、世の中で起こっている問題の構造や原因がとても理解しやすくなります。
精神疾患だけでなく、LGBTQにまつわる問題やフェミニズムなど、ラカンの理論を使って説明できる物事が非常に多いです。
フロイトの前提が必要なので難解とも言われていますが、ぜひフロイトと併せて勉強してみると見通しが良くなるのかなと思います。
蔭山ゼミでは、2,3ヶ月に一度リベラルアーツを学んでいます。開催数は、2024年7月現在、開催回数は107回を超え、毎回約20名の参加者がいらっしゃいます。
開催場所は新宿ですが、オンライン参加も可能です。
回ごとに異なるリベラルアーツのテーマを設定し、課題図書を事前に提示しています。講義とディスカッションを交えて学んでいます。課題図書は読めなくても完読しなくても、気軽に参加可能です。むしろ、参加することで、楽しみながら学べます。
蔭山ゼミは、スピーチライターゼミ(SWS)のメンバーを優先してご案内しています。SWSのメンバーで満席になってしまうことが多いので、ご興味のある方は、SWSへのご参加をお勧めしております。SWSのメンバーになると、蔭山ゼミの他にもスピーチやライティングなど、幅広く学ぶことができます。(詳しくはこちらから。)
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