年末30日、大阪中之島美術館で開催されているテート美術館展に行ってきました。ロンドンで見るより、コンパクトで非常にわかりやすい解釈がなされていたと思うので、ご紹介したいと思います。
まず、スタートは宗教と光の関係からスタートです。光は善、闇は悪みたいものとして光が捉えられているところからです。今でも、漫画・アニメの定番の神話の構造ですね。長い歴史の中で、いまだに続く表現なんで、きっと本質的な意味があるんだと思います。
次に、光の写実に写っていきます。
輪郭とはなにか?印象はどう生まれるのか?光ってそもそもどういう性質のものだっけ?みたいなものを追求していきます。ウィリアム・ターナーは、本当に美しい不思議な光を作り出すんですが、その基礎はしっかりとした物理的な光の上に成り立っています。のちに、印象派モネへとつながっていきます。
ちなみに、ぼくは印象派の画家ではピサロが好きです。
そして、いよいよ物理的な光から、光のみを解き放つ時代の始まりです。
モホイ=ナジ・ラースローのK Ⅶ(1922)は、矩形の構造だけで、光とモノの関係が取り出せるんじゃないかということに挑戦しています。しばらく見てて、「あ、わかった」と思ったら、ずっとそのようにしか見えないので、すごいです。1921年にピエト・モンドリアンがコンポジションシリーズの制作を始めているらしく、影響を受けているでしょうね。モンドリアンは色と線の太さをコントロールすることで作品が作れることを示しましたが、ラースローの作品はよく似たアプローチですが、やっていることがちょっと違いますね。頭良すぎる。
そして、バチェラーですよ。
この人、ぼくあんまりよく知らなかったんですが、後で調べてみると、とても面白い。要は、光を絵の具で表現するんじゃなくて、光を光で表現する。そして、都市社会・現代社会の光と闇を表現する。だから、ネオンの背面を表にして、壁側を光らせる表現が多いのかなと。置かれてた作品も背中から見たかったような?
からの、ニューマンとかロスコとかリヒターとかタレルとかのスーパースター全部すっ飛ばしての、オラファー・エリアソンです。2023年、もっとも注目を集めたアーティストではないでしょうか?
彼は、光そのものを扱うアーティストで、かれの映し出す光は、それはそれは美しいのですが、ただの綺麗なキラキラとはぜんぜん違うんですよ。たとえば、クリスマスツリーは綺麗ですが、そういうキラキラではない。どっちかっていうと、太陽のギラギラだし、深く意味を問う深刻さを伴うキラキラです。
今回の展示を見て、その正体の一つに位相があるのかなと思いました。複素数の世界観です。実態と像があるとして、私たちはモノよりも、モノに光が当たって結ぶ像の方に目がいく。私たちが見ているモノは、像なんではないか。そして、それは美しいのです。
ということで、宗教的光、物理的光、構造的光、光の位相という流れで解説がなされていたと思います。あくまで個人的な感想ですが、そんな間違ってないんじゃないかなあ。よかったなあ。
こんな素敵な仕事を2023年の最後に見れたので、2024年もがんばるぞ!
ということで、本年もよろしくお願いします。
スピーチライター 蔭山洋介
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