2月24日にウクライナ戦争が勃発し、僕ウクライナ戦争と呼んでいますけど、いずれそう呼ばれると思います。
しかしその中で新たな英雄が誕生しました。ゼレンスキー大統領です。
戦争に発展させてしまった非があるんじゃないかということで、英雄じゃなくて戦犯だという論調も一部あるんですけど、今彼が良くも悪くも世界中から注目を受けていることは間違いありません。
その彼がこれまで見られなかった全く新しいコミュニケーション手法を使って多くの世界中の人達を動員し、エネルギーに変えているという現実があります。
それがどういうものなのか、ご説明したいと思います。
そのために、パブリックコミュニケーションの歴史を振り返ってみるところから始めたいと思います。
元々スピーチというのは、基本的には演説と呼ばれるもので、大講堂みたいなところで人を集めて喋ったりとかが基本的な技でした。あとはビラを配ったりとかですね。
講堂がなかった古代ギリシャなんかは、アゴラと呼ばれる広場で皆自由に演説をしたわけです。そこで武器になったのはとにかくいい声と韻なんですよ。
内容を正確に聞いて、何が正しくて何が間違っているかということを議論するということは、情報化社会ではないわけですから、とても難しいわけですね。だから、いい声で韻を踏んでたくさん喋ったやつが勝つみたいなところがあって、そういう情報戦が展開されました。
それから時代は第二次世界大戦直前に飛んでいくわけですね。電気が発明されて、マイクと拡声器が誕生するんです。それまで生声で届けられる広さ、せいぜい1000人くらい、もしくは頑張っても3000人くらい、これが生声の限界だったと思うんですけど、ここでマイクというものが出て、拡声器というものが出て、その声をより多くの人に届けられるようになったわけです。
そうすると、でもここでもまだまだライブの世界で、代表者は誰かというとヒトラーとかなんですけど、あとはイギリスの人とかね。イギリスの首相とかがこの時にマイクを使った演説ということを初めてするんですけど、それ以前は生声で、ここからはマイクを使って喋るんですが、基本的には喋り方は演説調なんですよ。大きい声でよく通る声で喋っていくみたいなやつなんですね。
ところが、これにラジオが出てきます。ラジオでのスピーチというのは、これまでの演説を閉じ込めるものとは明らかに違いますね。
なので、ラジオに乗る明瞭な滑舌と発声というものが求められるようになります。ラジオの発声と生声の発声というのは全然違うものですね。だから、第二次世界大戦以後、このラジオ、あと映画ね。映画は演説を収録することが多いので、実際の演説をマイクで撮ってそれを聞かせるという流れになりますが、いずれにしてもパブリックコミュニケーションはラジオと映画が担うようになっていきます。
もちろん新聞というのも片方であるんですが、演説の系譜から見ると演説があって、マイクでより多く広げられるようになって、今後は電波を使ってより遠くの人、収録したフィルムによってより遠くの人にたくさんの人に見てもらうという時代が長らく続きます。
そしてテレビが登場します。テレビというものは喋っている姿、声をそのまま電波に乗せてより多くの人に届けられるということ。
しかも生で配信することも可能であるということで、これが一気に広がっていくわけですね。
映像の世紀とか呼ばれたりしますが、まさにテレビは映像の世紀を作り上げていくことになります。
それが皆の大体演説のアップデートの限界かなと思うんですけど、アップデートの限界というかそれが今でも続いていると思うんですけど、近年、トランプが大統領になってその時にSNSを使ったコミュニケーションというものを生み出します。
それまではテレビ局という局を挟んで自分のプロパガンダであったり、プロパガンダというのは最近テレビなどでよく解説されるようになりましたが、政府の都合のいい情報だけをつまんで流すことをプロパガンダといいます。
だから、ロシアの国営放送は、プーチンのプロパガンダばかりを流すみたいなふうによく使われます。
でもほとんどのテレビ局というのは自分での編集権を持っていますので、都合のいい情報だけを流してくれるわけじゃないんですね。
だから、トランプさんはその都合のいい情報が流れないので、自分の発信したい情報をそのまま伝えるということを目指して、SNSのTwitterを通して呟くと。
個人が直接大衆に語り掛けることができる時代というのが、このSNS時代。
特にTwitterの力で開花したのかなと思います。トランプさん以前にはアラブの春とかって言われた時には、Facebookを通して個人がコミュニケーションの主役になるというので、Facebook革命とか呼ばれたりしましたけど、それはそこまで大きなインパクトはたぶん残さなかったんですよ、歴史的に見て。
あの後結局、軍事政権に戻っちゃったし。だからトランプさんが広くTwitterで直接語り掛けたというのが、これまでの電波を使ったコミュニケーションからネットを使ったコミュニケーションへ本質的な移行が開始されたというふうに理解していいと思います。
SNSを活用してリーダーがコミュニケーションしていく時代がここで誕生したんですが、ゼレンスキーさんはこれを更に押し進めたわけです。
それが何かというと、オンラインを使って毎日のように動画をアップロードしてスピーチを世界中に届け続ける、そして世界中がゼレンスキーさんを報道し続けるという構造に見事に作り上げたわけです。
ゼレンスキーさんは、この3月4日チェコ、プラハで大規模なデモがありました。そこでオンラインでまさにzoomを使ったんだと思いますが、zoomでゼレンスキー大統領を繋いでそこで演説をしてもらったということなんですよね。
世界中が注目するリーダーが世界に出かけることなく、生の声を電波を使わずにネットに直接流し込む。そしてそれを聞いている人達が一体感を覚えて彼を支持するという、全く新しいコミュニケーションですね。
つまりリーダーのコミュニケーションを考える時これまではテレビを活用する方法、メディア、紙媒体、雑誌とか新聞を活用する方法、あとSNSを活用する方法があったわけですが、今はいろいろな集まってくれている箇所にとにかく顔を出してスピーチをしまくるということが可能になっているということですね。
これはゼレンスキーさんがこれを先駆けてやっていて、しかも世界的な成果も残していますから、この流れは必ず世界中のリーダーに波及します。
今後リーダーのコミュニケーションをどう支えるのかが、会社の推進力そのものである、組織の推進力そのものである、ビジョンを実現できるかどうかの要になる、こういう時代がもう到来したと言って過言ではないと思います。
だから、僕としてはこれを全力で支援していく形をどうやって作るかというのがこれからの課題になってくるかなと思います。
ウクライナ戦争を見ながらこのコミュニケーションの激変を感じたので、皆さんに一早くその様子をご報告させていただいた次第です。
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