それは思わぬ出会いだった。まさか、岡山の山奥にこんな奴が潜んでいるとは思わなかった。
レアポケモンが藪から飛び出してきたような、意外な出会いだった。かれこれ、もう5年近く前のことだ。
岡山の老舗旅館『季譜の里』の佐々木さんと関わらせて頂いているとき、岡山で「家具が作れないか?」という話になった。
そこで、僕のイリノイ大学の友人で、一流企業を辞めて木工にチャレンジしているke-jiに連絡を取った。「誰か知らない?」
返事は、期待通りだった。「知っている。岡山の西粟倉に住んでいる。」
それが奴だった。
奴の名は、大島正幸と言った。
大島さんは、こんなことを言いはじめた。「森林活用の問題でひのきが余っているから、ひのきで家具を作って売り出したい。しかし、ひのきは強度がないので、家具に向かない。だから、叩き壊しながら強度を確かめている。一向に完成しなかったが、ようやくできたところだ。」そんなことを言った。すごい執念だと思った。
見せてもらった家具は、とても軽く、美しく、そして丈夫だった。ひとしきり感心していると、大島さんは僕らのその態度に気を良くしたのか、不思議な事を聞いてきた。
「木、好きですか?」
奇妙な質問だった。果たして木が嫌いな人がこの世に存在するのかさえ疑問である。しかし、この質問にはこう答えざる得なかった。
「はい、好きです。」
奇妙な回答だった。
しかし、この奇妙すぎる回答は、すなわち一緒にプロジェクトを進めようという返事でもあった。
それから、木工房ようびとの付き合いが始まった。数々のプロジェクトを共にこなしてきた。ほとんど無名だったようびも、今では木工で知らぬ者のいない有名人になってしまった。
そんなようびが、今度NHKで30分も番組で特集されるらしい。すごい。見なきゃ。
ちなみに、この写真はコムニスのミーティングセットだ。
このテーブルの上で、どれだけ重大な会議を繰り広げてきたのか分からない。価格のゼロが一つ多い気もする家具のセットだが、こいつなしにコムニスは語れない。
本当に感謝している。
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